● 第32回JSC賞 池田俊己氏が受賞 「布川事件」冤罪者の日常を記録 三浦賞は『春に散る』の加藤航平氏/日本映画撮影監督協会
日本映画撮影監督協会(JSC)は5日、第32回JSC賞および第67回日本映画撮影監督協会撮影新人賞「三浦賞」の授賞式を、東京・調布クレストンホテルで開催した。
【JSC賞】
JSC賞は、劇場映画以外の映像作品において優れた撮影技術を示した撮影者を表彰する。今回受賞したのは、映画『オレの記念日』(金聖雄監督)を撮影した池田俊己氏(JSC)が受賞。
昭和42年に茨城県で当時62歳の男性が殺された「布川事件」で当時20歳の桜井昌司さんが逮捕され、29年間投獄された後に再審を勝ち取り、無罪となった。作品は桜井さんの体験講演会や他の再審請求者への支援活動などの日々を描いたドキュメンタリー。桜井さんは投獄中より両親や自分自身へ向けて多くの詩を書きとどめ、歌にもしてきた。えん罪により逮捕された日すらも〈オレの記念日〉にしてマイペースで歩み続ける姿が、運命に屈せずポジティブに生きる人間の強さを伝える(桜井さんは2023年8月、ガン闘病中のところ永眠された)。
使用機材はソニー製ハンディカメラ「PXW-Z280」30P収録DCP仕上げ。
審査員の宝生良成氏は、次のように評価内容を説明。「桜井さんの日々の活動を描いたこの作品で池田氏は10年以上撮影しており、カメラは常に桜井さんとその周りの人たちに対して入り込み過ぎず、傍観者でもなく、程よい距離感を保っている。映像には安定感が有り、見る側が桜井さんを自然に受け入れる事ができるように撮影されている。これは池田氏がキャリアを生かし安定した撮影を続けたからであり、作品に大きな貢献をしている」。
表彰を受けた池田氏は「桜井さんは、えん罪という重く背負ったものがあるにもかかわらず、普段はものすごく明るく前向きに生きているということがわれわれにもとても感じるところがあって、それを描くために、彼の普段の日常を描くことをコンセプトとし、彼を普通に追っかけるのではなく、そこに一緒にいる感覚を主に考えた」と話した。
また表彰式に駆け付けた金監督からは「日本の中ではまだ、ドキュメンタリーは文化映画だと少し別に置かれているような気持ちが私の中にあるが、自信を持ってこれからも映画として作品を世に送れるよう、池田さんと一緒に頑張っていきたい」とたたえた。
【三浦賞】
三浦賞は、劇場用映画において優れた撮影技術を示した新人撮影監督を表彰する。第67回三浦賞は『春に散る』(瀬々敬久監督)を撮影した加藤航平氏が選ばれた。
審査員の御木茂則氏は「高度な撮影設計から生まれた完成度の高い映像が、2人の男の物語を力強く表現し、安心して映画の世界に没入することができた。監督が演出した芝居に対して、俳優の瞳への光の当て方が、順光、逆光、瞳へのキャッチライトなど駆使して、観客に見てもらいたい俳優は誰なのか、そのシーンそのショットで適格な表現がされている。これは照明の領分だけでなく、撮影者が適格なカメラポジションに入ることで、照明技師がそれを実現できる。つまり、撮影前の事前の打ち合わせ、撮影が始まってからも撮影者と照明技師が密にコミュニケーションを取ることで生まれた映像といえる」
と審査員からの高い評価を述べた。
受賞した加藤氏は「三浦賞は20年前の学生時代から憧れがあった。今作は自身2本目の劇場公開作品で、今までの瀬々作品にはないカラーを出そうと思って、自分なりに撮影、設計した作品が、このような賞をいただき、大変光栄。私もフィルム時代から始めて、あっという間にデジタルに変わり、今、私のように助手からやってきた人間ではなく、自主映画なり、いきなりカメラマンになって活躍されるデジタルネイティブが多くいる。この三浦賞で嬉しいのは、助手からコツコツと頑張っている後輩たちから、お祝いの言葉をもらったり、いつかカメラマンになりたいと言われたりしたこと。それが自分自身にとっての励みにもなる」と述べた。
瀬々監督からは「彼は人を見る目がすごく興味深く、人が好きだというのがすごく現場で感じた。それが人物を際立たせ、受賞理由にもなっていると」と話した。
『春に散る』は、ボクシング世界チャンプを目指したが挫折し、40年ぶりに米国から日本へ戻った広岡が、飲み屋で出会った若者にボクシングのコーチを頼まれたことから、ボクシングの世界へ戻ることになる。『ボクシングを通じて [生きる] を問うこと』をテーマにした作品。
撮影と照明のコンビネーションから生み出される、映画の流れに合わせて演出する光が印象的な作品で、具体的にはそのシーン、そのショットでどの俳優を観客が注視すべきかを照明によりコントロールしている(JSC)。
公開は2023年8月25日(133分)、配給ギャガ。
なお、両受賞者には副賞として、カメラが使用されたソニーマーケティングより、4Kブラビア43V型テレビが贈られた。
● ディスプレー関連の優秀事例 「新宿カブキhall」がS&Dアワード大賞を受賞
2023年のサイン&ディスプレー関連の優秀事例を表彰する「第3回S&Dアワード」(マスコミ文化協会主催)が、昨年11月15日に都内で開催された。
グランプリには「新宿カブキhall ~歌舞伎横丁」が選ばれ、乃村工藝社、昭和ネオン、シブヤテレビジョンが受賞した。
また、準グランプリは、「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS Twinkle LIVE Constellation Gradation」のドームプロジェクション演出で、バンダイナムコエンターテインメントとマイノオトが表彰された。
● 第43回「地方の時代」映像祭コンクール NHK「立つ女たち」がグランプリ 各部門の入賞作品を表彰
第43回「地方の時代」映像祭2023(主催=「地方の時代」映像祭実行委員会〈NHK、日本民間放送連盟、日本ケーブルテレビ連盟、吹田市、関西大学〉)が昨年11月18-24日の7日間、大阪府吹田市の関西大学 千里山キャンパスで実施され、初日には第43回「地方の時代」映像祭コンクール授賞式が開かれ、参加285作品から選ばれた各賞を表彰した。
各賞は以下のとおり(敬称略)。
★グランプリ
「立つ女たち ~女性議員15%の国で~」 NHK
【放送局部門】
★優秀賞
「国民と国家 ある日 戦争が始まったら-」 中京テレビ放送▽ 「立つ女たち ~女性議員15%の国で」 NHK▽ 「評価不能 新型コロナワクチンの光と影」 CBCテレビ▽ 「ドキュメント新潟 震える手 ~少年の転落 被害女性の孤独~」 テレビ新潟放送網
★選奨
「こころの時代~宗教・人生~『オモニの島 わたしの故郷 ~映画監督・ヤンヨンヒ~』」NHK大阪放送局/NHKエンタープライズ近畿▽ 「救いの手 ~統一教会と富山政界~」 北日本放送▽ 「第6波の結末 ~コロナ禍の障害者事業所~」 朝日放送テレビ▽ 「豊穣の海 ~ゴミ浜とゴミバカ」 南海放送
【ケーブルテレビ部門】
★優秀賞
「戦地からの手紙 ~家族へ宛てた386通~」 長崎ケーブルメディア▽ 「里山の宝石 オオムラサキとともに」 日本ネットワークサービス▽ 「『物』の聲を聴け ~65年、ただひたすら集めて~」 秋田ケーブルテレビ
★選奨
「『つながり』豊野住民の復興 -1013台風災害から3年-」インフォメーション・ネットワーク・コミュニティ▽ 「原富男という生き方」 伊那ケーブルテレビジョン▽ 「I Dream of Caring ~介護への夢と現実」 Goolight▽ 「続・丸裸温泉街 -コロナ禍1000日の葛藤-」 キャッチネットワーク
【市民・学生・自治体部門】
★優秀賞
「『ななみの家』の挑戦 ~満足死のための看護」 椙山女学園大学 栃窪ゼミ▽ 「南西諸島の空から~ある特攻隊員の日記~」 中央大学FLPジャーナリズムプログラム 松野良-ゼミ▽ 「川の図書館 本が編む物語」 上智大学 文学部 水島ゼミ
★奨励賞
「よみがえる商店街」 東京工芸大学芸術学部映像学科▽ 「出稼ぎの時代から」 白鷹町出稼ぎの記録映画制作委員会▽ 「私たちの答え ~中国人留学生の学歴と社会~」 関西大学社会学部 齊藤ゼミ▽ 「ぬいぐるみと生きる」 東京大学情報学環▽ 「海渡」 仲信達也▽ 「その声に耳を傾けて」 上智大学 水島ゼミD班
【高校生(中学生)部門】
★優秀賞
「技能実習生はベトナムのお母さん」広島学院高等学校▽ 「84歳のビデオグラファー」 静岡大成高等学校▽ 「自分ごと」 松本深志高等学校▽「51年ぶりの生徒会長」宮城県仙台第三高等学校
★奨励賞
「今を生きる」椙山女学園高校▽ 「命の中継地」 福井県立藤島高等学校▽ 「時間をかけて、少しずつ」 桜丘高等学校(三重県)▽ 「排除と分断の校則」 加古川市立陵南中学校▽ 「Are You Ready?」 私立錦城高等学校
● 「KAIROS展」を開催 第2世代製品の機能説明/レスターコミュニケーションズ
レスターコミュニケーションズは、1月23、24日に「Panasonic KAIROS展」を開く。展示製品は、パナソニック コネクトの「KAIROS AT KC2000T/AT KC10C2G」およびリモートカメラ「AW UE160」。
KAIROSは、ライブ中継・配信および会場演出の「撮る・創る・映す」を革新するライブ映像制作プラットフォーム。
今回展示する第2世代製品は、第1世代と比べて映像処理能力が向上した高性能GPU/CPU構成により、さらに自由度の高いライブ映像処理を低遅延で実現する。また、可搬型・静音性を高めることで、より場所を選ばずシステムを構築でき、ソフトウエアの追加で機能拡張や外部機器との連携が可能となる。
参加無料(事前申し込み制)。
【日時】1月23、24日/①10時-11時30分 ②13時-14時30分 ③14時30-16時 ④16時-17時30分(24日は④なし)
【会場】Restar Vision Park(東京都品川区北品川2-32-3 六行会総合ビル1階)
【申し込み・詳細】www.restarcc.com/pickup/exhibition-information
● DCAJビジネスセミナー CES2024報告会開く 本紙論説委員が解説
デジタルコンテンツ協会(DCAJ)は、ビジネスセミナー「CES2024報告会」を2月7日にオンライン(Zoom使用)で開く。参加無料、定員100人。
1月9-12日(現地時間)に米国・ラスベガスで開催されたCES2024の注目ポイント、また、それらから見えてくる世界のテクノロジーのトレンド、ビジネスのヒントなどについて、30年以上CESを定点観測している映像新聞論説委員で日本大学講師の杉沼浩司が報告する。
また、毎年CESでスタートアップが集まる「Eureka Park」の中でも盛況であった「J-Startup」に出展した2社(One by One Music、Portalgraph=経済産業省事業「TechBiz2024」採択企業)の代表が、スタートアップ企業から見た「CES」を語る。
【日時】2月7日/15時-16時30分
【申し込み・詳細】ces2024-dcaj.peatix.com